自然素材を加える=生分解できる?

最近では、トウモロコシやサトウキビ、農業廃棄物繊維などの「自然素材を配合した」リサイクル製品をよく見かけます。こうした表現は、一見すると「自然に分解されて環境に優しい」と思わせがちですが、実際にはそこにサステナビリティの落とし穴が潜んでおり、せっかくの環境への思いやりが逆効果になってしまうこともあります。

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Provided by SANYO+SANIN | Photographer: Zih-Sin Jian

自然素材を加える≠生分解できる

想像してみてください。身の回りの自然環境の中に、次のような条件が存在するでしょうか?「温度60℃、特定の菌群・湿度・酸素濃度を一定に保ちながら60日以上維持する環境。
これは多くの植物由来素材が分解されるために必要な工業用コンポスト施設の条件です。こうした厳しい条件をすべて満たさなければ、生分解できるとされる素材も、実際には細かく砕けてマイクロプラスチック化するだけで、自然の循環の中に完全に戻ることはできません。

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Pexels, Mikhail Nilov

一方で、このような人工的に管理された環境を維持するには、膨大なエネルギー・スペース・時間を要します。現状のリサイクル施設ではこうした素材に対応しきれず、せっかく環境を思って購入された再生製品も、最終的には処理できず焼却炉でごみとして燃やされてしまうのが実情です。そのため、各国ではこのような素材の使用を適切に管理するため、より厳格な規制や表示基準を導入し始めています。

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Pexels, Flambo

もう一つの懸念:農地や生物の棲み処との競合

世界の生分解性プラスチックの3分の2以上は、トウモロコシ、キャッサバ、サトウキビなどの農作物を原料としています。しかし、生物由来プラスチックの生産が利益を生むようになると、これらの作物の買い取り価格が高騰し、食料用農地との競合が激化します。さらに、耕作面積を拡大するために違法な森林伐採や原生棲地の破壊が進み、人間や野生生物の生存権を脅かす事態にもつながります。こうした状況は、「国際プラスチック条約」が掲げる公正で持続可能な移行 (Just Transition) の理念にも反するものです。

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Pexels, Csankovszki Tibor

複合素材は品質を不安定にし、製品寿命を短縮させる

確かに、自然由来の素材を加えることで、石油由来のバージンプラスチック使用量を減らすことはできます。しかし、異なる素材を混ぜ合わせることで構造が複雑化し、製品の強度や安定性が損なわれることがあります。その結果、多くの人がこうした「再生素材を使った商品」で経験するように、購入して間もなく劣化や破損が起きるという問題が発生します。

このような植物由来プラスチックこそ、再利用後の用途までを総合的に設計することが不可欠です。それを怠れば、ユーザーの期待を満たせないだけでなく、頻繁な買い替えによる資源の浪費を招き、さらに廃棄物処理システムへの負担を増大させる結果となります。

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Provided by SANYO+SANIN | Photographer: Zih-Sin Jian

石油由来プラスチックを減らし、リサイクルで限りある資源を管理する

プラスチックに代わるまったく新しい素材が発明されるまでは、発生源でプラスチックを減らすことが世界的な共通認識となっています。これは、石油由来のバージンプラスチックへの依存を最小限に抑え、潜在的なプラスチック廃棄物の増加を防ぐことを意味します。代表的な取り組みとして、次のようなアプローチがあります。

- 使い捨てプラスチックを削減する (包装材、袋、カトラリーなど)。
- プラスチック製品の寿命を延ばし、
再利用性と長期使用を促進する。
-
プラスチック素材を再生・再利用し、循環型のシステムを構築する。

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Provided by SANYO+SANIN | Photographer: Zih-Sin Jian

RHINOSHIELDは、独自の材料工学の専門知識を生かし、従来のプラスチックに代わる持続可能な新素材を国際的な研究機関と共に開発しています。また、すでに2017年からは全シリーズのスマホケースで単一素材設計を全面採用し、100%リサイクル可能な構造を実現。さらに、リサイクル素材の循環ライフサイクルを6倍に延ばすShockSpread™ ECO素材技術も独自に開発しました。

そして2024年には、「バージンプラスチック使用0・100%リサイクル素材由来」の象徴的モデルCircularNextを発表。
スマホケースを「使い捨て容器」から、iPhone16からiPhone20、さらにはiPhone30まで使い続けられる
循環型容器へと進化させました。

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完全に生分解でき、なおかつプラスチックの機能的な利点も兼ね備えた素材が誕生するその日まで、素材の循環ライフサイクルを適切に管理することこそが、いま生産者にとって最も現実的かつ緊急に実践すべき課題です。